スパイクジャンプの助走は、最後の一歩が重要だといわれます。
3歩助走(フォーステップ)の場合、2歩目から3歩目の動きが
重要だということです。しかし、この「重要」の中身には諸説あ
ります。
ちなみに、最後の1歩(ツーステップ)を「ステップ・クローズ」と
言います。右利きなら逆足でないかぎり、右→左となるこのステッ
プクローズを諸外国はツーステップと数え、日本では1歩と数える
ために数が異なります。
ステップ・クローズに入るスピードですが、速ければ速いほどよ
いと言う人もいれば、必ずしもそうではないという人もいます。
前者は男子に多く、女子は、ステップクローズの前(2歩目)で少し
ためを作るように指導している人が多いようです。ためを作るこ
とでタイミングを取り、ステップクローズを作る準備をやりやす
くするためです。
できるだけ遠くに飛ぶ場合は、陸上競技の走り幅跳びのように、
踏み切り時のスピードをMAXに近づけますが、バレーボールの
スパイクのとき、同じようにスピードを上げると、ジャンプどこ
ろじゃなくなってしまいます。水平移動の動きから垂直方向への
動きに移るとき、水平移動のエネルギーが強すぎて筋力が耐え切
れず、勢いをコントロールできなくなるためです。
世界レベルの男子選手の走り幅跳びの踏み切り時のスピードは、
10m/sec(36km/h)を超えますが、バレーボールの場合は、4m/sec
(14.4km/h)前後で、広島大学の橋原先生らの研究によると、この
速度を超えると、最高到達点が低くなるそうです。(ちなみに一
般レベルでは、2.8m/sec(10km/h)前後)
ひたすら遠くに飛ぶ走り幅跳びと、タイミングを計り、ボールを
見て飛ぶバレーボールを、単純に比較することは出来ませんが、
半分以下のスピードですね。走り幅跳びは踏み切りで減速せずに
跳躍しますが、スパイクのジャンプは、多少のブロードはあると
しても出来るだけ上方向に跳躍するため、水平方向だけの動きを
見ると、スパイクの場合は踏み切りのとき、急ブレーキをかけて
いることになります。
バレーボールの場合、この急ブレーキのエネルギーを、踏み切り
の姿勢の中「筋肉」や「腱」で吸収し、一気に放出することでジャ
ンプするわけですが、このとき筋肉は、グッと力を入れて耐えな
がらも、物理的に伸ばされます。筋肉はこのような状態のとき、
防衛反応として強力に縮む性質をもっており、これをジャンプす
るときの力に利用します。また腱は骨と筋肉を繋いでいるもので、
腱自らが伸縮することはありませんが、外からの力で引き伸ばさ
れると、筋肉よりも強い力で縮みむ性質があり、これら一連の伸
張反射を使って、高いジャンプをもたらせるわけです。
助走のスピードが遅いと伸張反射の効果が得られず、速すぎると
コントロールできなくなってしまいますので、それぞれの筋力に
応じた、伸張反射の効果が最大になるスピードが最適だといえる
わけです。この最適なスピードがトップレベルの選手で4m/sec前
後だということです。
トップレベルで4m/sec、一般レベルで2.8m/sec、一般レベルの助
走はトップレベルの助走の70%のスピードです。しかし、踏み切
り時のエネルギーでみると、運動エネルギーは速度の2乗に比例す
るので、2.8×2.8÷4×4=0.49=49% と、約半分のエネルギー
でジャンプしているわけです。これは、筋力が半分ということで
はなく、重心の移動や腰・ひざ・足首などの角度など、踏み切り
の技術に差があることを意味すると考えられます。
ここまでは、オープンスパイクについて書いてきましたが、バッ
クアタックでは助走のスピードを高くする傾向にあります。バッ
クアタックは、ブロードジャンプにより、助走のエネルギーを殺
す(減速する)ための力を使わなくてすみますので、助走のスピー
ドを高くすることができます。
オープンスパイクのときのブロードが1.5m、バックアタックのと
きが3mとしたとき、同じ力を使ってジャンプした場合、どのくら
いスピードが上げられるかというと、減速加速のエネルギーは、
速度の2乗÷停止距離に相関しますので、
オープンスパイク 4m/sec(14.4km/h)の場合
(14.4km/h×14.4km/h)/0.0015km≒138240
(20.36km/h×20.36km/h)/0.003km≒138240
オープンスパイク 2.8m/sec(10km/h)の場合
(10km/h×10km/h)/0.0015km≒66667
(14.14km/h×14.14km/h)/0.003km≒66667
というわけで、
トップレベルで約6km/h、一般で4km/hほど助走を速くすることが
出来ます。また、ブロードすることで、前への移動が体重に乗り、
打球のスピードが増すというメリットもあります。