上記ランキングでオーストラリアを見ると男子が13位、女子が14位です。 順位だけを見れば日本とさして変わりのない中堅国といったところです。
しかし、女子の4月のランキング27位を見ればわかるように、急激な上昇 を見せています。特に女子は4年前は40位のあたりをうろちょろしていた
のですから驚きです。
オーストラリアは、1976年のモントリオール・オリンピックで、金メダルゼロに終わり、「これじゃいかん!」と、東欧圏の社会主義国の強化システムを視察し、8900万豪ドル(約61億円)をかけてAIS
(The Australian Institute of Sport=オーストラリアスポーツ研究所) を81年に設立しました。
▲レジャー&スポーツによるAISの紹介記事
AISの特徴は、現在の韓国や、かつての東欧共産圏諸国のような一部のスポーツエリートをピンポイントで強化するためだけのものではないところです。AISが重要視しているのは、学校スポーツを含め、国民全体を対象としたスポーツを広げ、基礎の段階からスポーツを楽しくし
っかり学ばせてやろうというものです。 一部のエリートだけを強化するのではなく、スポーツを楽しめるような 環境を作り、競技人口そのものを拡大させ、その中からトップレベルの競技者が生まれてくるという考え方です。
AISのトップアスリートについては、外国から招いた80人以上のコ
ーチや研究者、東京ドームの約14倍の敷地の施設で、常時数100人が合宿をする環境でトレーニングしています。
AISのトップアスリートは専門競技のトレーニングのほかに以下のよ うなサービスが受けられます。
- 食事,宿舎の無料提供
- 競技用具の支給・提供
- スポーツ医科学部門の支援
- 遠征費など交通費の支給
- 学資、奨学金の支給
- 教育支援
特に最後の「教育」というのは、他国に例を見ないものです。トップアスリートはトレーニングに一日の大半を費やし、学校の授業に毎日は出席できませんが、近くの学校とAISが提携しているため支障はありません。一般の生徒より1、2年卒業は遅れるかもしれませんが、本人が望む教育は受けられるプログラムが用意されています。
また、ACE(アスリート・キャリア・エデュケーション)プログラム
というものがあり、国を代表する選手としてのマナーや、記者会見での対応、スピーチのしかた、就職相談、コンピュータースキル、などなどの教育プログラムで、一社会人として、また、国を代表するスポーツマ
ンとしての教養を身につけられるプログラムです。
AISでは引退後のサポートまでも積極的に行っています。
競技者としての期間より、引退後の生活のほうが長いのですから、そのためのサポートやケアは重要です。日本では、「スポーツに明け暮れた ため大学を卒業できなかったが、実業団からスカウトがあったのでそのまま就職し、怪我をしたため競技を引退したら、給料は高卒扱いだった」
という例もあります。
オーストラリアでは、AISだけでなく国を挙げての「オージースポーツ・プログラム」という計画があり、より多くの人にスポーツの楽しさを味わってほしいと、スポーツ環境や条件を整えています。幼児期から
成人するまでを対象に、年齢や能力・環境に応じて、どのように指導し ていくべきかを7つのカテゴリーに分けて示しているのですが、これがまた面白いのです。「スポーツを敬遠しがちな女子中高生に対するキャン
ペーンプログラム」「パソコンを使って、個人の体力や運動能力、興味 関心に応じて、自分に適したスポーツを調べるプログラム」などなど・・・
オーストラリアのスポーツ強化策の原点は「スポーツ・フォア・オール」 の精神です。すべての子供がスポーツを楽しみ、その中からトップアス
リートが育ち、引退後も幸せな人生を送れる。実際はこんなによいこと ばかりではないでしょうが、理想ではあります。