■はじめに
学校のクラブでは体育館が1つしかないため、バスケットボール・卓球・バドミントンなどのクラブと交代で活動していることが多いことでしょう。そのため、限られた練習時間を有効活用しようと、
ウォーミングアップとクールダウンをないがしろにし、技術練習に多くの時間を割いていませんでしょうか? 時間ぎりぎりまで技術的な練習をするため、クールダウンは行わないことのほうが多いと
いうクラブも少なくありません。
バレーボールは、バスケットボールやサッカーなどとは違い、プレーヤー同士の接触プレーがないため、深刻なケガは捻挫や打撲よりも疲労の蓄積が原因・遠因のものが多いのです。また、ボールを持っ
てはいけないという高度な技術を要するスポーツのため、何度も同じ動きをする反復練習が大半を占め、疲労が蓄積しやすいスポーツでもあります。バレーボールプレーヤーの障害に多いジャンパーひ
ざ・ひざのじん帯損傷・アキレス腱断裂などは、疲労の蓄積に起因していることが多いといわれているので、指導者はプレーヤーの疲労をある程度コントロールする必要があるのです。今回は、こわば
った筋肉を十分にほぐし、伸ばしてから運動するための「ウォーミングアップ(ウォームアップ)」と、練習やゲームの疲れを翌日に引きずらないための「クールダウン(ウォームダウン)」についてお話
します。
■ウォーミングアップの意義
ウォーミングアップの意義として、以下の4項目が挙げられますが、要は、心肺機能・筋肉・柔軟性などを、すぐに動ける状態にすることです。
- 運動するという心の準備
- 体調の良し悪しの判断
- 運動中のケガの防止
- 活動水準の向上
■ウォーミングアップの強度と時間
ウォーミングアップの強度と時間は、人それぞれで、人的側面(若い・壮年など)や環境的側面(寒い・暑いなど)を考慮しなければ
なりません。普段あまりスポーツをしていない人に対しては、心の準備に時間をさく必要がありますし、毎日練習しているような人に対しては、活動水準を高め、効率的な筋活動をさせるためのメニュー
を考えなくてはいけません。
ただ、どんな人、どんな環境においても体温(筋温)を上昇させる必要があるので、汗をかくような運動は必要です。体温を上昇させるには、最大酸素摂取量の40%前後の運動を10分以上続ける必
要があるといわれています。40%前後の運動とは、心拍数110〜120拍/分で、何とかしゃべりながら出来る強度の運動のことです。軽いジョギングやステップ系の動きがこれに該当しますが、できれば、
鬼ごっこやグループゲームをとりいれ、毎回メニューを変え、遊びながらウォーミングアップが出来ると良いと思います。
■ストレッチ
ストレッチは柔軟性の向上のために行います。ストレッチには様々な種類があり、目的によって使い分ける必要があります。
- バリスティックストレッチ(動的伸展)
反動で弾みをつけて行うストレッチです。ラジオ体操などがこれにあたります。バレーボール特有の動作を考慮した準備的ストレッチとして効果的です。しかし、急激な伸張により、怪我や痛みの原因
になったり、間違った方法で行うと、かえって可動域を狭くする可能性があります。
- スタティックストレッチ(静的伸展)
1975年アメリカのボブ・アンダーソンが「ストレッチング」として著し、日本には1978年頃アメリカの陸上選手によって紹介され、現在、もっとも一般的に認識されているストレッチです。反
動や弾みをつけないので怪我や痛みが起きにくく、もっとも安全に伸張運動が可能です。ただ、静的運動のため、運動前の準備運動としての効果は低く、導
入部分に取り入れると良いでしょう。また、ひとつの関節への伸張運動のため、全身を行うには時間がかります。
- PNFストレッチ
「Proprioceptive Neuromusclar Facilitation」(自己受容的神経筋促通)の略で、リハビリの分野のテクニックを応用したものです。
意識的な筋収縮〜弛緩(ホールド&リラックス)によって起こる神経と筋の興奮をうまく利用して柔軟性を高めます。PNFは大きなストレッチ効果が期待でき、ひとつの関節だけでなく、複数の関節
への適応が可能です。しかし、CR、CRACなどという小難しい理論を把握しないと逆効果になる場合があるので注意が必要です。具体的な理論や方法などは、書籍などで確認されると良いでしょう。
■ストレッチの向き不向き
これまで見てきたとおり、ストレッチは種類によって効果が違います。以下に種類による適性を(1)準備運動(2)整理体操
(3)疲労回復 (4)柔軟性向上に分け、あげてみます。
準備運動 整理体操
| |
準備運動 |
整理体操 |
疲労回復 |
柔軟性向上 |
| バリスティック |
○ |
|
|
○ |
| スタティック |
|
○ |
○ |
|
| PNF |
○ |
○ |
|
|
■体調の良し悪しの判断
アメリカンフットボールや野球の選手は、ウォーミングアップのとき「今日は反応がちょっと鈍いな」などと感じると、フォームや守
備位置を変える工夫をしています。反応の鈍さをフォームや守備位置で補っているのです。このように、ただ漫然とウォーミングアップを行うのでなく、自分の体調などの変化を自覚する必要がありま
す。「今日はふくらはぎが張ってるなあ」と感じたら、なぜ張っているのか、疲労が蓄積されているからか、障害の危険信号か。また、この張りはストレッチなどによって改善できるのか、今日は運動を
休んだほうが良いのか、などを考えなければなりません。
■クールダウン
クールダウンの意義としては、以下の3つがあげられますが、大切なことは、その日の疲れを翌日まで引きずらないことです。一般的には前出のスタティックストレッチが有効とされています。
- (1)運動で高まった心の沈静化
- (2)体の異常と障害の防止
- (3)疲労の早期回復
■アイシング
クールダウン時のストレッチは、その日の疲れを翌日まで引きずらないという意味においてかなり効果がありますが、アイシングも同様に
素晴らしい効果があります。野球で先発ピッチャーが降板したあとベンチで肩に大きなサポーターのようなものを巻いているのをよくみますが、まさにアレです。アイシングはケガをした部位に対して
もアイシングを行いますが、クールダウン時のアイシングは、その日酷使した部位に対して行います。アイシングを行うと筋肉痛と筋肉が硬くなることを軽減出来ます。